行かないで、

置いていかないで、

独りに、しないでー・・・・・。

まだあどけなさの抜けない少女の先程の言葉が頭から離れない。

少年は必死に頭を振った。



「もう、逢えないんだから・・・・・」



自分に言い聞かせる様に呟く。

けれど、目の前が霞んで見える。



(駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だー・・・・・!)



何度頭の中で駄目だと言っても、諦めきれない自分が居る。

もしかしたら、と思ってしまう自分が居る。



(自分は何の為に強くなった、

何の為に辛い鍛錬を頑張ってきたんだ。

自分が護りたいと思ったのは何だったんだ・・・!)



少年は自室に戻ってからずっとこんな調子だった。

何度も何度も同じことを繰り返す。

そうしているうちに、やがて少年の父親がやって来た。

そして少年に問いかけ始める。



「お前は騎士なのだ」

「はい」

「騎士が国の為、王族の為に戦えるというのに、迷う必要が何処にある?」

「ありません」

「では何故、お前は迷うのだ?」

「・・・・・・私は、迷ってなどおりません」

「それなら良いのだ、出発は明日の明朝だ。しっかりと準備をして置くのだぞ」

「・・・・・・・・はい」





明朝、少年が準備を済ませ外に出ると

そこには居るはずのない少女が居た。

動けなくなった。

決意が揺らぎそうになってしまった。

少女は少年を見つけると、駆け寄ってくる。



「わたくしは、」

「私は国の為の騎士なのです、姫様一人の騎士ではありません」



少年は少女の言葉を遮り、言った。

最後まで聞いてしまったら、確実に揺らいでしまう。

少女はそうですね、と頷き、

大きな瞳を濡らしながらも精一杯、微笑んで言った。



「ならばせめて、生きて国の為に働いてください」



少年は頷くことも無く、少女を背に歩き始めた。

もう逢えないことも承知しながら。



「お父様達は、やはりわたくしが嫌いなのね。

よりによって駆け出しの騎士を、あんな所へと送るなんてー・・・・」



御免なさい、そう少女は呟き涙した。

そしてせめて、と祈り始めた。





         勇敢な騎士一人 お姫様独り












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