黒い空。それが示すものは、不吉。歯車は、再び動き出そうとしていた。
Eternity
――――――――序章・それは、悲劇の前兆。T
今、レシティア皇国は混乱している。
それもそのはず、空が黒いのだ。
今は昼。夜でも何でもない。
雲の所為、と言う訳でもない。
これが混乱せずに居られるだろうか。
「おかあさま。だいじょうぶ?どこか、いたい?」
そんな空を見つめていた母を、幼い娘が心配した。
母親と同じ綺麗な藍の眼で、問いかけてくる。
母親は自分では只見つめているだけ、と思っていたが
どうやらそうではなかったらしい。
「ここ。しわができてる」
そう言いながら、幼い娘は自分の眉間を指した。
どうやら息子達の方も母親を心配していたようで、
そんな2人のやり取りをじっと見つめていた。
落ち着いた青の髪と眼をしている上の息子は、少し沈みながら。
明るい青の髪と眼を持っている下の息子は、少し怒りながら。
「大丈夫よ。何もないから、心配しないで」
半分は自分に言い聞かせるように。
微笑みながら、母親は子供達に
だから遊んでいても良いのよ、と言った。
「じゃあ、母さま!ぼくたち、父さまのところに行っててもいい!?」
「それはダメよ。お父様はお忙しいのだから・・・・」
元気良く言った息子に、母親は申し訳なさそうに答えた。
その答えに息子は落胆し、
その息子より少し幼い息子は、つまらなさそうな顔をした。
「おかあさま」
娘の方は何時の間にか窓から外を眺めていた。
「まちが・・・・へんだよ」
その娘の言葉に、母親は絶句した。
そして、窓の外を見る。
「都が・・・・・崩れてく・・・・!?」
その眼に見たのは、信じられない光景で。
気が動転した母親は、隙を見せてしまった。
「あぁ・・・・・!?」
此処の警備は万全のはずなのに。
この男は・・・・どこから入ってきたのだろう・・・・?
「一度だけ問う。瑞樹・セフィード」
そういった男の手には、しっかりと子供達が捕らえられていた。
3人もいるが、まだ子供達は小さく、幼い。
左の腕には一番上の息子を、右の腕には真ん中の息子と末娘をしっかりと掴んでいる。
抵抗の術をほとんど知らない。
「今、此処で、死んでくれたまえ。大人しく死んでくれるのなら、一つだけ望みを叶えよう」
男の風貌は分からない。
頭からマントのような布をかぶっている所為だ。
しかし、男が人外であることは分かった。
マントはしっかりと人と同じ形をしているが、彼の性質が人とは違うということが。
「ならば・・・・・」
母親はそっと瞳を閉じ、男の問いに静かに答えた。
「子供達と、この世界の平穏を返してくださいますか」
「・・・・よかろう」
母親の言葉の意味に、上の息子は気づいたようだった。
下の息子と娘には分からなかったようだが。
母親は、子供達に微笑みかけた。
「・・・・ごめんなさい」
そしてそう言ったまま、動かなくなった。
男はそんな母親の事を、暫く見つめ、そして消える様に居なくなった。
「母さま・・・・?」
「おかあ・・・・さん?」
息子達の呼ぶ声に、母親は、もう答えられない。
「おにぃちゃん!まち、まえといっしょだよ!!」
下の息子も、先ほどの母親の言葉の意味を知った。
まだそのことが分からない娘だけが、はしゃいでいる。
「おにぃちゃん・・・・?・・・・・おかあさま、どうしたの・・・・?」
「何でも無いよ。母さまはちょっとお休みしているだけだよ」
まだ幼い娘は、自分の兄の言葉を信じた。
本当の事は、まだ知らなくていい。
「・・・・なん、で」
その問いに答えられる母親は、もうこの世界には居ない。
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